概要

周波数で100GHz~10THz、波長が3mm~30μmをテラヘルツ(THz)波と呼びます。光と電波の中間に位置しており、可視光線とマイクロ波の間の領域に相当します。一部の物質に対して透過性が高いため、紙、プラスチック、布などの一般的な材料を透過して物質の内部情報を取得することができ、これは非破壊検査や医療画像診断に利用されています。

原理

テラヘルツ波の生成と検出にはいくつかの方法があります。はじめに、その生成方法について紹介します。

  1. 光パルス法(光検出法)
    一般的な方法の一つは、フェムト秒またはピコ秒の超短パルスのレーザを使用してテラヘルツ波を生成する方法です。この方法では、レーザーパルスがテラヘルツ放射を引き起こすため、テラヘルツ波が発生します。このテクニックは光検出法とも呼ばれます。
  2. 光整合法(光学整合法)
    光整合法は、非線形結晶などの光学的整合材料を使用して、二つの異なる光波を組み合わせてテラヘルツ波を生成する方法です。このプロセスは、高い光整合度を持つ結晶を使用して非常に高い周波数の波を生成することが可能です。
  3. 光伝播法(放射法)
    他の手法として、高い電場の光を物質に照射すると、物質が非線形応答を示し、その結果としてテラヘルツ波が発生することがあります。この方法は光伝播法として知られています。

次に、テラヘルツ波の検出方法について紹介します。

  1. 非線形光学効果を利用した検出
    テラヘルツ波は一般的に検出が難しいため、非線形光学効果を利用して検出されることがあります。これには、光検出法と同様に、光学的整合材料や非線形結晶を使用することが含まれます。
  2. アンテナを使用した検出
    テラヘルツ波を検出するためには、適切なアンテナが必要です。特に、微小な結晶や金属のアンテナを使用して、テラヘルツ波を効果的に検出することができます。

応用例

テラヘルツ波の周波数帯は光の特徴である直進性やミラーやレンズによる取り回し易さ、電波の特徴である様々な物質に対する透過性を併せ持っているため、計測や検査に注目されています。以下にその応用例をいくつか紹介します。

  1. 組織の特性の調査
    テラヘルツ波は、生体組織において水分や脂肪などの特性を検出できるため、医療画像診断に利用されます。がんなどの疾患の早期検出や、組織の異常な変化の追跡が可能です。
  2. 材料の特性評価
    テラヘルツ波は多くの物質に対して透過性があり、金属、プラスチック、ガラスなどの材料の内部構造や異常を非破壊で評価できます。これは工業や建設分野での利用が期待されます。
  3. 高帯域通信
    テラヘルツ波は非常に高い周波数を持っており、これを利用して高帯域通信が可能です。将来的には、テラヘルツ通信が5G以上の通信規格として登場する可能性があります。
  4. 物質の特定
    テラヘルツ波は物質の異常な特性を検出できるため、セキュリティスクリーニングや爆発物の検知に応用されます。例えば、荷物やコンテナの中の異常な物質を特定するのに使用されます。
  5. 食品の品質評価
    テラヘルツ波は、食品の水分や油分などの特性を測定するのに適しています。これにより、食品の品質評価や異常検出が可能となります。
  6. 分子の振動スペクトル
    テラヘルツ波を使用することで、分子の振動スペクトルを観察できます。これにより、分子の構造や化学反応の進行状況を非破壊で調査することが可能です。

参考文献


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